江戸料理レシピデータセット

日本古典籍データセットに含まれる江戸の料理本を対象に、江戸の文化を現代に取り込むための「江戸料理レシピデータセット」を提供します。

最初の江戸料理レシピとして、100種類以上の卵料理を集めた『万宝料理秘密箱 卵百珍』を取り上げます。

『万宝料理秘密箱 卵百珍』の江戸料理レシピ

くずし字を読める日本人が少ないという中で、日本古典籍データセットのようなデジタル画像を提供するだけでは、市民によるオープンデータ活用を進めることは難しいのが実情です。古典籍を日常生活にどのように活用していけばいいか、と考えたところ思い当ったのが江戸時代の料理本でした。これを現代語訳すれば、現代の人々も自分で料理を作って楽しめるのではないだろうか、と。

雑煮などの季節の料理や地方色豊かな料理などは、日本人の生活に深く根ざしたものです。そして日本の料理としての和食は、単なる料理法を越えて自然の尊重という日本人の精神に基づく文化を表すとも言われています。平成25年には「和食:日本人の伝統的な食文化」がユネスコ無形文化遺産に登録され、和食文化に対する国際的な認知度も高まってきました。そんな和食という文化をより深く理解するには、過去の料理について学び、気が向けば自分で作ってみることもできるレシピデータが必要です。そこで構築したのが「江戸料理レシピデータセット」です。

データ概要

原本画像データ 日本古典籍データセットで公開する画像です。くずし字を読め、かつ江戸時代の日本語や料理法を知っていれば料理が作れます。
翻刻テキストデータ 原本画像のくずし字をテキスト化したデータです。江戸時代の日本語や料理法を知っていれば料理が作れます。
現代語訳データ 翻刻テキストデータの内容を現代の日本語に翻訳したデータです。江戸時代の料理法を知っていれば料理が作れます。
現代レシピデータ 現代語訳データの内容を、現代の道具や食材でも作れるものに変更し、食材の分量や写真を加えてより具体化したデータです。手順に従えば料理が作れます。

日本古典籍データセットで公開した料理本はくずし字で書かれており、しかも用語や素材などを理解するには当時の文化に関する知識が必要となるため、料理本の画像データを公開するだけでは誰もが江戸料理を作れるわけではありません。そこで我々は、これを現代のレシピ形式に整備する作業に取り組みました。

まず、くずし字で書かれた原典の記述を、現代の文字を用いたテキストに翻刻します。続いて、テキストの言葉遣いを現代の日本語に翻訳します。しかし、これだけでは現代の人々が使えるレシピにはなりません。食材の名称が現代とは異なったり、調理の手順や材料の分量が明示されていなかったり、当時の道具は入手が困難だったりするからです。江戸時代の古典籍に書かれた情報を活用するには、ことばや文化の違いによる問題を超えるための手助けも必要となります。

そこで、江戸時代や現代の料理文化に関する専門知識を持つ方々の協力を得て、現代の人々でも利用できる形式に料理記述を構造化する 「レシピ化」の作業に取り組みました。例えば、「容器ごと水で冷やす」を「冷蔵庫で2時間程度冷やす」へと現代の道具を用いる手順に変えたり、「葛粉」を「片栗粉」へと入手しやすい材料に変えたり、「卵10個」を「卵5個」へと現代の生活にあった分量に変更したりしました。こうしてレシピ化された調理手順では、食材の分量や調理の様子を文章と写真でわかりやすく説明しているため、記載された手順に従えば、どなたでも江戸時代の料理を自分で作ってみることができるでしょう。

さらにクックパッド江戸ご飯の「つくれぽ」機能に公開されたレシピを基にした現代風のアレンジなどが続々と報告されるようになれば、江戸料理に興味を持つ人々が協力しながら知識を充実させていくことも可能です。そして、現代の生活に過去の文化を取り入れるという観点から、江戸時代から続く和食の価値の見直しにもつながることが期待されます。

ライセンス

クリエイティブ・コモンズ・ライセンス
江戸料理レシピデータセット』(情報・システム研究機構 データサイエンス共同利用基盤施設 人文学オープンデータ共同利用センター作成) 『日本古典籍データセット』(国文学研究資料館所蔵)を翻案 はクリエイティブ・コモンズ 表示 - 継承 4.0 国際 ライセンス(CC BY-SA)の下に提供されています。

ご利用の際には、例えば以下のような表示をお願いします。

『江戸料理レシピデータセット』(CODH作成) 『日本古典籍データセット』(国文研所蔵)を翻案

また可能な場合には、データ提供元である人文学オープンデータ共同利用センターへのリンクをお願いします。

提供:人文学オープンデータ共同利用センター

問い合わせ先

データ・ウェブサイトに関する問い合わせ窓口 (CODH)

情報・システム研究機構 データサイエンス共同利用基盤施設 人文学オープンデータ共同利用センター
電子メール:kitamoto [at] nii.ac.jp

資料に関する問い合わせ窓口 (国文研)

国文学研究資料館 古典籍共同研究事業センター
電子メール:cijinfo [at] nijl.ac.jp
電話: 050-5533-2988

参考文献

協力

「江戸料理レシピデータセット」プロジェクトは、クックパッド日本家政学会 食文化研究部会が運営するクックパッド 江戸ご飯プロジェクトに参加しており、こちらでも一部のデータを公開しています。

江戸料理レシピデータの構築には、合同会社AMANEグルメ クッキング ファクトリーピッツェリア ジオ・ピッポの協力を得ました。

更新情報

2018-02-09

国文学研究資料館の「古典に親しむ」の記事「江戸時代のレシピ本」で江戸料理レシピデータセットが紹介されました。

2017-05-25

江戸料理レシピデータセットを更新し、レシピが5→15、現代語訳が20→40に増えました。

2017-01-06

『万宝料理秘密箱 卵百珍』の「家主貞良卵(かすてらたまご)」の現代語訳の誤りを修正しました。

2016-11-24

江戸料理レシピデータセットを公開しました(ニュース)。