まめ知識

CODHが公開するデータセットに関するまめ知識をまとめます。

くずし字とは?

日本古典籍データセットの画像をみてもらうと読めたり、読めなかったり。それはなぜでしょうか。「くずし字」を理由にする人がいるかも知れません。

でも「くずし字」を形を崩した文字と定義したなら、今日、私たちもくずし字を書いているのです。ひらがなは元々は漢字であったものを崩したもの。たとえば「あ」は「安」という漢字(これを字母といいます)がくずれたものです。ちなみにカタカナは漢字の一部分を利用しています。たとえば「ア」は「阿」から出来ているのです。

古典籍が読めないのは、たしかにくずし方が極端なものもあり分からないということ、ときには文字と文字が繋がっていてどこまでが文字かがわからないということもあります(これを連綿体といいます)。

それよりもむしろ見たことのない形が出てくることが、読むのを困難にしている場合が多いのではないでしょうか。

実は、かつては1音節に対し種々の字体があったのです。簡単にいうと、私たちは「ɑ」と発音すると「あ」の文字を思い浮かべます。先にいいましたが「安」がくずれた文字です。でも昔は「阿」「愛」「悪」などのくずれた形の物も「ɑ」でした。つまり音と文字が一対一対応ではなかったのです。今日では一種に統一されており、その他を変体仮名と言っています。「音」対「文字」が1対多であるとしたら、知らない文字があっても読めないのは当たり前ですね。

現代のように1対1対応になったのは1900(明治33)年小学校令施行規則で採用された時からです。言い換えればたかだか100年ほどしか経っていません。ちょっと変体仮名を覚えるだけで実は簡単にむかしの書物を読むことができるようになります。一度チャレンジしてみては如何でしょうか。

山本 和明(国文学研究資料館)