江戸買物案内

江戸買物案内は、江戸時代に出版された『江戸買物独案内』から、IIIF Curation Platformを活用して広告版面を切り抜くとともに、商人名や職種、居所(住所)、屋号紋などを抽出することで、江戸を中心とする商人に関するビジュアルな商業広告データベースとして構築したものです。さらに江戸マップβ版などの地理情報と紐づけ、江戸の商業空間を再構築します。

江戸買物案内キュレーション - IIIF Curation Finderによる検索

また関連プロジェクトとして、江戸観光案内もご覧下さい。

江戸買物案内の活用

江戸買物案内は、IIIF Curation Platformを利用して『江戸買物独案内』から収集した商人のデータを、様々な切り口で検索・再編集可能にしています。

メタデータ項目を眺めていくだけでも、今では思いもよらない職業や、身近な地名などを見つけることができますし、中には凝った江戸時代の商業広告を見ることもできます。また、江戸の都市を復元するためのデータとして以下のような活用方法を考えることができます。

1. 地名を軸に当時と現在の状況を比較する

江戸時代の地名には21世紀の東京にも残っているものが多くあります。地名を軸に検索をすることで、現在の東京と異なる、または共通する当時の状況を知ることができます。

例えば「浅草」で検索すると、今日同様に浅草寺の周辺には料理、菓子、土産など多くの店が並んでいますが、一方で多くの薬種商が立ち並んでいるという今とは少し異なった風景を見ることができます。

一方で、現在も製薬会社が多い日本橋の「本町三丁目」で検索すると、伝統的な薬問屋である「唐和薬種問屋」が当時から立ち並んでいたことが分かります。

図1 浅草の菓子店・薬種商
図2 本町三丁目に並ぶ唐和薬種商

2. 版面利用の特徴を比較する

宣伝文を書いたり店舗のイメージを載せたりと派手に演出をしているものと、商人名や居所といった定型文のみのものなど、商人によって版面のバリエーションは様々です。サイズや演出に注目すると、商人による版面利用の特性を見出すことができます。

例えば、「仲間」に属している薬種問屋の多くは統一的で定型的な版面を採用しています。一方で、薬を直接販売する商人は、自慢の薬種の効能を述べたり、看板風のデザインで商品名を目立たせたりと派手な演出を行っています。

図3 仲間「大伝馬組」に属する薬種問屋の定型的版面(上)と、薬種商の演出された版面(下)

データベース構築

江戸買物案内はIIIF Curation Platformを利用して構築しました。具体的な手順は以下の通りです。

  1. IIIF Curation Viewerのキュレーション作成機能を利用し、『江戸買物独案内』から商人ごとの掲載範囲を選択し収集しました。
  2. IIIF Curation Viewerのキュレーションメタデータ編集プラグインを利用し、商人名や居所・江戸マップβ版のIDなどのメタデータを付与しました。
  3. IIIF Curation Finderにより、メタデータで検索可能なデータベースとして公開しました。

メタデータは以下の方針に沿って付与しました。

項目 説明
出典 『江戸買物独案内』飲食の部、問屋の部のどちらに掲載されているかを示します。
仲間 株仲間や組合が記載されている場合、その情報をまとめました。
版面サイズ 出版者に支払った代金によって、各商人に割り当てられている版面のサイズが異なります。この版面サイズをデータ化しました。1/2ならばページの半分を占めていることを表し、2ならば2ページ(見開き)を占めていることを表します。
ページの大半をオリジナリティあふれる広告で占めた版面や、同業者が同じフォーマットでページを分割している版面など、デザイン面にも注目しやすくなります。
商人名 商人名を記載しています。
職種(原本表記) 版面の表記通りに職種を記載しています。職種が明確に記載されていない場合は、国立歴史民俗博物館の「江戸商人・職人データベース」の表記にならい(薬種)などを記載しています。今後は検索の便に供するために、統一語彙としてまとめた職種を準備していく予定です。
居所(原本表記) 出版物に表記されている地名をそのまま記載しています。
居所(歴史地名大系) 原本では漢字・かな・新旧地名の混在などがあり、同じ居所であっても標記に揺れがあります。そこで平凡社の日本歴史地名大系に従って、統一的表記に修正した居所を記載しています。辞書の内容によって、記載の居所よりも指定範囲がやや広くなっている場合もあります。
例:亀屋清兵衛の居所 居所(原本表記)=「本町二丁目南側」、居所(歴史地名大系)=「本町二丁目」
江戸マップID 江戸マップβ版に該当する居所については、江戸マップβ版のIDを付与しています。
備考 宣伝文や効能書き、上記のメタデータに含まれない情報を記載しています。

利用した資料

『江戸買物独案内』(日本古典籍データセット・国文学研究資料館撮影/味の素食の文化センター蔵)

  1. 『江戸買物独案内』 (100249503)
  2. 『江戸買物独案内』 (100249505)
  3. 『江戸買物独案内』 (100249509)
  4. 『江戸買物独案内』 (100249553)

参考資料

  1. 国立歴史民俗博物館「江戸商人・職人データベース」(データベースれきはく) ※『江戸買物独案内』記載の文字情報をまとめたデータベース
  2. 『日本歴史地名大系』平凡社

メンバー

  • 総括:北本 朝展(人文学オープンデータ共同利用センター / 国立情報学研究所)
  • キュレーション制作:鈴木 親彦(人文学オープンデータ共同利用センター / 国立情報学研究所)

参考文献

  1. 北本 朝展, 鈴木 親彦, 寺尾 承子, 堀井 美里, 堀井 洋, "地理的史料を対象とした歴史地名の構造化と統合に基づく江戸ビッグデータの構築", 人文科学とコンピュータシンポジウム じんもんこん2020論文集, pp. 171-178, 2020年12月 [ Paper ]
  2. Chikahiko SUZUKI, Asanobu KITAMOTO, "Creating Structured and Reusable Data for Tourism and Commerce Images of Edo: Using IIIF Curation Platform to Extract Information from Historical Materials", Digital Humanities 2020, 2020年7月 (in English) [ Paper ]
  3. 鈴木 親彦, 北本 朝展, "IIIF Curation Platform による『江戸買物独案内』のマイクロコンテンツ化:非文字情報を軸に", 人文科学とコンピュータシンポジウム じんもんこん2019論文集, pp. 11-18, 2019年12月 [ Paper ]

謝辞

江戸買物案内は科学研究費助成事業「人文学資料マイクロコンテンツ化の実践研究 -江戸の都市空間再構築を通して-」(20K20141・研究代表者鈴木親彦)の支援を受けて構築しています。

品質向上への取り組み

江戸買物案内はさらなるデータの改善や幅広い活用を目指しています。品質向上やメタデータ項目の整理に関するご意見については、下記報告フォームよりお寄せください。

江戸買物案内 報告フォーム

ニュース

2020-12-07

江戸買物案内を公開しました。