江戸マップβ版について

江戸マップβ版は、国立国会図書館が公開する古地図「江戸切絵図」29枚から8722ヶ所の地名を抽出して地名データベース化するとともに、現代の地図や情報とも統合することで、歴史ビッグデータ歴史GISや江戸都市空間の地理情報基盤を構築に活用します。なおデータ収集にはIIIF Curation Platformを利用しています。

本サイトで用いる地図は、発行当時の資料をそのままの形でデジタル化したもので、現代においては適切でないと思われる表現も含んでいます。地図上の表現を基にした偏見や差別は肯定・容認されてはならないものですが、本サイトでは学術・研究目的として原本の通り表記しています。この点をご理解・ご留意の上でご利用ください。

作業内容

国立国会図書館が公開する江戸切絵図から地名を抽出し、ウェブサイトに一覧を表示するとともに、IIIF Curation Viewerで可視化する機能を公開します。地名を抽出する作業にはIIIF Curation Viewerのキュレーション作成機能を活用し、地名の可視化にはIIIF Curation Viewerのアノテーション表示機能を利用しています。

現在の江戸マップβ版では、以下のように地図および地名を選択しています。

  1. 地図の選択: 全32枚のうち、作業をおこなったのは29枚です。残りの3枚は、既存の地図と重なるエリアを扱っているため、当面は作業対象から除外します。また作業をおこなった地図の中でも、まだ抽出漏れとなっている地名があります。
  2. 地名の選択: 地名として抽出する対象は、一部の分類に限定しています。また屋敷名は数が多いため、重要なものに絞って抽出しています。

江戸切絵図について

  1. 江戸切絵図は、国立国会図書館デジタルコレクションでインターネット公開されているものを使用した(著者:景山致恭,戸松昌訓,井山能知//編、出版社:尾張屋清七、出版年月:嘉永2(1849)-文久2(1862)刊)。

各項目について

  1. 「番号」:番号の付け方は、「絵図番号−個別番号」とし、一地名ごとに番号を振った。なお、データ作業の過程で欠番となったものは本データ中に記載していない。
  2. 「分類」:地名分類表にしたがって分類したものを記した。
  3. 「翻刻」:IIIF Curation Viewerを使って部分矩形領域を指定した画像に掲載されていた文字情報を翻刻したものである(※以後、矩形領域を指定することを「切り取り」と表現する)。ただし、誤字と思われる文字は原文のまま入力した。
  4. 「現代語訳」:原文を現代語訳したものを入力した(例.「◯◯丁」→「◯◯町」。「◯◯イナリ」→「◯◯稲荷」)。原本に誤字と思われる文字があった場合は、修正した文字を記載した。
  5. 「関連情報」:日本古典籍データセットで公開している『寛政武鑑』の上屋敷と菩提寺情報と江戸切絵図の情報をリンクさせたもの。
  6. 「備考」:各項目に入力した情報に対し、根拠とした参考図書・WEBの内容を引用、またはメモしたものである。[ ]内には参考文献の略称またはHP名を記載し、Web情報の場合はURLも併せて入力した。

内容

  1. 漢字は、常用漢字を用い、異体字・旧字体は原則として新字体に改めた。かすれ等で判読不明の文字は、参考文献を参照した。それでも不明な場合は、「□」と「[ ]」で示した(文字数が不明な場合は「[ ]」を、文字数が分かる場合は「□」とした)。
  2. 町域が2つに別れている場合(例.「◯◯町」「一丁目」)は、一つの領域として切り取った。
  3. ◯・△などの記号が記されている場合は、原文のまま記載した(例.「◯〜町ト云」)。辻番、木戸、高札、坂、鳥居などの記号は、記号を切り取った上で、現代語訳欄には記号を名記し、丸括弧で囲った(例.「(辻番)」)。ただし、同じ敷地内に文字と記号が記されている場合は文字のみ切り取った(例.神社名+記号の鳥居がある場合は、神社名のみ)。
  4. 文字情報と建物の図が離れて記されている場合、建物本体や門を切り取り、文字情報は翻刻欄・現代語訳欄「( )」内に記した。複数の文字情報がある場合は、「/」で区切った。
  5. 「同」が複数連なって記載されている場合は、中心点の一箇所のみ切り取り、その他は切り取らなかった。また、飛び地のようになっている場合は、個別に切り取った。
  6. 区画が赤色(寺社)であれば、人名のみでも切り取りを行った。
  7. 「◯◯屋敷」「◯◯店」となっている箇所は、参考文献『日本地名大系』で町村字と確認できたものは、分類を「町村字」とした。ただし、通称や俗称は「地名」とした。
  8. 「◯◯町」と記載されていても『日本地名大系』に記載がなく、文字の背景の色が黄色となっているものは分類を「地名」に、背景が灰色のものは「町村字」とした。
  9. 原則として固有名詞でないものは地名として抽出していない(例.切取あり:「◯◯河岸」「◯◯稲荷」「◯◯屋敷」。切取なし:「河岸」「稲荷」「小屋敷」、「小役人」、「医者」など)。

地名分類表

以下は、我々が独自に構築した地名分類表である。

分類 内容
施設 御城、御用地、御用屋敷、御役屋敷、門、河岸、馬場、囚獄、銀座、蔵、木戸、火除地、揚地
屋敷地 「(紋)」、「●」、「■」、「組屋敷」・「添屋敷」、◯◯組、同心など
寺社 「門」(寺社の一部である場合のみ)、人名(江戸切絵図原本の背景が赤色・「◯◯神職」などと記載がある場合)
商店 植木屋、「◯◯屋」、商店名など
地名 「◯◯辻」、「◯◯通り」、「◯◯道」、橋、渡、新田、清水、上下水など
町村字 「◯◯丁」、「◯◯町」、「◯◯門前」、「◯◯町蔵地」、町屋など
海川池 「◯◯池」、「◯◯渕」
名所 石碑、「一本桜」、観光情報など
その他

江戸切絵図の凡例

以下は、オリジナルの江戸切絵図に掲載されている凡例である。

内容
御紋(白) 御上屋敷
■(白) 御中屋敷
●(白) 御下屋敷
寺社
道路并橋
町家
海川池堀
山林土手馬場植溜等

参考文献

  1. 国史大辞典、吉川弘文館、1979年3月1日~1997年4月1日
  2. 日本歴史地名大系、平凡社、1979年9月20日~2004年10月20日
  3. 復元・江戸情報地図、吉原 健一郎 (編集)、 俵 元昭 (編集)、 中川 恵司 (編集)、朝日新聞社、1994年10月
  4. 日本国語大辞典 第二版、小学館、2000〜2002年
  5. 角川新版日本史辞典、KADOKAWA、2013年第8版
  6. 江戸切絵図集成 第4・5巻 (尾張屋板 上下)、斎藤直成編、中央公論社、1982年

地名リンク

江戸マップを中心として、様々な史料を地名でリンクしていく計画です。これまでのところ、以下の史料とリンクしています。

武鑑全集

武鑑全集においてまとめる大名家の上屋敷(259件)や菩提寺(243件)とリンクしています。ただし『寛政武鑑』よりも江戸切絵図は数十年後に作成されているため、移転後の場所にリンクしている場合があります。

メンバー

総括・ウェブ作成
北本 朝展(ROIS-DS人文学オープンデータ共同利用センター/国立情報学研究所)
データ作成
合同会社AMANE
データ作成補助
前山 和喜(総合研究大学院大学 文化科学研究科 日本歴史研究専攻 博士後期課程)