AI を研究に使うときの作法をまとめる。まず AI の時代に研究の方法がどう変わるかを述べ、続いてデータを作る場面、問う場面、エージェントを使う場面の作法を述べる。
4 AI との協働
下位の章
- 4.1 AI 時代の研究方法 AI が研究の手順を担えるようになったとき、研究の方法と研究者のあり方はどう変わるか。研究者の関与の深さを Human-in-the-loop・Human-on-the-loop・Human-out-of-the-loop の三類型で定義し、それぞれで責任の所在がどう変わるかを述べる。研究者が指揮者になるとはどういうことか —— 権限を委ねながら研究責任を保ち、出力を批判的に評価する能力を保つという構造。著者性と責任、研究の評価や査読がどう揺らぐか。研究者と学生がどう育つか —— 技術の習得が研究に入る前提でなくなったこと、AI が比較的取り組みやすい問題を解ける段階での博士課程の指導の変化、デジタル化からの転回を必要としない世代との違い。そして AI の時代に人文学の何を教えるか —— 学生が AI を使うときに何を身につけるべきか、教える側が何に変わるか。三類型と指揮者概念は本節が本文書における唯一の定義箇所である。
- 4.2 AI でデータを作る AI に作らせたものをデータとして扱うときの作法。人がどこで関わるか、誤りが残る前提でどう使うか、そして AI が作ったものであることをどう記録し、どう伝えるか。何を作らせるかは対象ごとに各節が扱うので、本節は対象を問わない作法だけを述べる。具体例として、DiHuCo ガイドラインシステムにおける記事生成ワークフロー——AI が生成した記事を AI がレビューし、講演者本人が確認してから登録する手順、素材にない情報を書き加えてしまう問題(幻覚)への対処、そして問題を工程設計に戻すループ——を取り上げ、誤りが残る前提での使い方・検査・工程改善のループを具体的に説明する。
- 4.3 AI で問う・読む AI に問いを投げて資料を読む。検索と生成を組み合わせる仕組み、意味による検索、対話による探索、翻訳や註釈の生成。資料を AI が読める形に整えること。返ってきたものを専門家が評価するという工程。
- 4.4 AI エージェントの活用 AI エージェントを研究に使った具体例。どの作業をエージェントに任せ、研究者がどこで確かめ、何が起きたか —— 調査、コードの作成、文書の生成と検査などの実例を、事例ごとに述べる。
- 4.5 AI と社会 AI を使うことが社会との関係で何を起こすか。学習と生成をめぐる法、権利処理とオプトアウト、真贋の判定、学習データに入っていないものの不在、計算資源と言語資源の非対称、そして AI が何を見つけさせ何を見つけさせないか。