ライセンスと権利処理をめぐる材料は限られている。以下は、成果物の権利をめぐる問い、何を開き何を閉じるかの戦略、利用条件の表示の三つの面から、記事が述べている範囲を整理したものである。なお、ライセンスの選択を担う節ではあるが、主なライセンスの条件の違いやその帰結を述べた材料は今回の記事群になく、特定の事例で採られた方針や表示の紹介にとどまる。

素材の権利と成果物の権利は別に問われる

素材の権利と成果物の権利は別の層にある。ガイドライン自体の公開が、その具体例になっている。ガイドラインは三つの版で管理される。作業版は常に更新され、AI によって内容も書き換えられるため引用には向かない。候補版は作業版を凍結した版で、以後はコミュニティからの提案に基づいて修正される。承認版はコミュニティの承認を得た版で、以後は更新されず、安定した引用ができる。この状態遷移は、インターネットの執筆プロセスである IETF RFC を参照している [UC-034 §ガイドラインの版と権利]。

素材にあたる記事の権利は、この枠組みのなかでは整理されている。ガイドラインが参照する記事は、講演者と DiHuCo の共同著者として CC BY ライセンスで公開される [UC-034 §ガイドラインの版と権利]。権利の所在が不明確になるのは成果物の側である。

この論点に結論は出ておらず、問いとして残っている [UC-034 §ガイドラインの版と権利]。素材を CC BY で公開し、成果物の全体に別の条件を付す方針を採る場合でも、AI が再構成した部分と人間が構造を与えた部分とで権利の及び方が異なりうる点は、公開の設計に含めて考える必要がある。

何を開き、何を閉じるかを共同の相手と決める

公開の条件は、単独で決めるだけでなく、データを持つ企業との共同のなかで決める場合がある。江戸時代の空間的エンティティを扱う取り組みでは、地理情報を扱う企業と共同してオープンデータが作られている。

これらの事例では、何をオープンにし何をクローズドにするか、ライセンスをどう設定するかを工夫し、双方にメリットのある形を目指している。広く共有したうえで別のプラットフォームに統合して利用する流れが想定されている [UC-012 §今後の展望と課題]。

開く範囲を一律に決めず、共同する側の事情に合わせて開く部分と閉じる部分を切り分ける、という戦略である。公開してよいかどうかの判断そのものは「公開できるもの・できないもの」で扱うため、ここではライセンスの設定が共同の条件づくりの一部になっていることだけを指摘しておく。

利用条件の表示としてのライセンスと PDM

デジタルアーカイブを提供する側の話題には、持続可能性や OSS、DOI などと並んで、利用条件・ライセンスが挙がる。具体的には CC License や PDM(Public Domain Mark)が示される [UC-003 §デジタルアーカイブの情報学的利活用と IIIF Curation Platform]。提供側が利用条件を明示するという枠組みは、ここで確認できる。パブリックドメインの資料をどう使うか、あるいは各ライセンスを選んだときに何が帰結するかについては、この記事は述べていない。