はじめに

本講演では、立命館大学アート・リサーチセンターの矢野桂司氏が、歴史都市・京都をコンピュータ上の時空間として構築する「バーチャル京都」プロジェクトを紹介します。とくに、撮影地点と撮影年が明確な大規模な景観写真のアーカイブと、それらを都市景観の時空間分析に生かす方法に焦点を当てています。古写真・映像・絵画資料をGISで地図化して活用したい方に役立つ内容です。

バーチャル京都と4D-GIS

バーチャル京都(Virtual Kyoto)は、歴史都市・京都の過去・現在・未来を探究するためにコンピュータ上に作られた仮想の時空間です。GISとVRの技術を用い、異なる時点の3D-GISを重ねた4D-GIS(3次元のGISに時間の次元を加えたもの)として構築しています。平安から現在・未来までの時間断面を設け、京都にかかわるデジタルアーカイブ資料を配置して、京都の文化と芸術をインターネットで世界に発信する基盤です。

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プロジェクトは2002年に始まり、矢野氏は25年近くの蓄積があると述べました。

成果は書籍『Virtual Kyoto: Exploring the Past, Present and Future of Kyoto』(2007年)や『Historical GIS of Kyoto』(2011年)にまとめられており、ArcGIS Online上にも構築されています。近年はより詳細な3Dモデルも作成しています。矢野氏は、地図と景観写真をもとに、約50~100年前・約400年前、さらに約1,200年前の都市景観を再現したいと述べました。

京町家と近代洋風建築の調査写真

京都は第二次世界大戦による被害がきわめて小さく、京町家をはじめとする古い建物が今も数多く残っています。現存する京町家の多くは江戸後期から昭和初期に建てられたもので、かつて税が間口の幅で決められていたこともあり、間口が狭く奥行きの深い造りになっています。

京町家の調査は1998年ごろから続けられ、2008〜2009年には大規模な現地調査を行って、京町家の写真47,735枚を位置情報とともに撮影しました。2016年には追跡調査を実施しています。各町家は階数による構造類型、窓・格子・戸・壁の型、意匠の状態(4段階)で記録され、GIS上のポイントデータとして整備されています。これらの写真は個人情報として非公開ですが、各種の調査やプロジェクトに利用しています。

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19世紀後半から第二次世界大戦前に建てられた近代洋風建築も調査しました。これらは『Directory of Japanese Modern buildings』(1980)では京都に570件が掲載されていますが、京都市の近年の調査では2,000件以上が確認されています。その所在地を特定し、矢野氏の共同研究者が撮影しました。

寄贈写真・市電写真・街路景観写真・絵葉書の地図化

アート・リサーチセンターは、昭和期(1926年以降)を中心に、京都・日本・海外の古写真や映像を数多く所蔵しており、データベースとして整備し、地図化しています。

近藤豊氏から寄贈された写真59,974枚はデジタル化を終え、ARC写真データベース 近藤豊氏 コレクション閲覧システムとして誰でもアクセスできます。メタデータに撮影地点が記録されているため、地図化も容易でした。谷岡武雄氏から寄贈された写真資料32,508枚も、同じ仕組みでデジタル化しています。ヨーロッパと日本の地誌学の専門家だった谷岡氏の写真については、矢野氏の同僚や学生が、地名から正確な撮影地点を特定しています。

京都の鉄道・バス 写真データベースには、主にアマチュア写真家が撮影した京都の市電の写真9,135枚を収めています。撮影地点を特定して路線沿いに地図化しており、GoogleマップやGoogleストリートビューと並べて過去と現在を比較できます。

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京都市(Planning Department, Kyoto City)による1960年代ごろの街路景観写真約600枚も地図化しました。撮影の目的は京都市の職員にも分かっていませんでした。これをもとにWeb地図「Kyoto Street Landscape in 1960s」を構築し、たとえば四条通の当時の景観と現在のストリートビューを容易に比較できるようにしています。

景観の記憶を伝える資料としては、絵葉書もあります。矢守家絵葉書データベースには1,288点の絵葉書を収めており、絵葉書から分かる場所と時期をもとに地図化しています。

京都ニュース映画の地名の地図化

「京都ニュース」は、1956年から1994年まで京都市内の映画館で本編の前に上映された、数分間のニュース映画のシリーズです(全244本)。市政ニュース映画の先駆的な取り組みの一つで、祭り・交通・防災など幅広い話題(全921トピック)を扱っています。デジタル化はすでに完了しており、京都ニュースアーカイブには1956〜1972年の486トピックについて、映像(mp4)とナレーションのテキストを収めています。

このプロジェクトでは、話題のタイトルからワードクラウドを作成し、ナレーションのテキストから地名を抽出して、ArcGISのジオコーディング(Geocoding、地名を地図上の位置に変換する処理)で地図化しました。ただし同じ地名が全国に数多くあり、行政区名を補うか駅名・公共施設名などに置き換えなければ場所を特定できないため、これを自動で行うことが課題の一つです。

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次の段階として、映像の画面から景観の場所を検出することを目指しています。矢野氏は、AI技術を使えば撮影地点を正確に特定できるようになることを期待していると述べました。

浮世絵・祇園祭デジタルミュージアム・大縮尺地図

写真以前の景観を伝える資料として、アート・リサーチセンターは多数の浮世絵を所蔵しています。19世紀後半の「都名所百景」(100 famous views of Kyoto and its environs)のような景観画についても、描かれた場所と時期を特定できます。矢野氏は、こうした絵を過去の場所・景観、さらに現在の状況と、WebGISの技術を使って比較したいと述べました。

長い歴史をもつ祇園祭は、コロナ禍の2020年と2021年に中止となりました。そこでアート・リサーチセンターは、祇園祭のデジタルミュージアム(2020年版・2021年版)を構築しました。蓄積してきたデータアーカイブを時空間情報で結びつけ、バーチャル京都の2D・3D地図などを通じて、4,000点を超える画像・映像・音声を閲覧できるようにしています。

講演資料では、現在の地図と並べて、第二次世界大戦後の京都市明細図(Large Scale Maps of Kyoto City, 1927-1951)を示しました。デモでは、家屋ごとに描かれた縮尺3,000分の1の大縮尺地図を背景に、過去の街路のパノラマ写真をGoogleストリートビューと対応させ、写真と地図を見比べる様子を示しました。

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まとめと今後の展望

矢野氏は講演のまとめとして、次の点を挙げました。

  • 地図・写真・映像・美術作品・テキストといった多様なデジタルアーカイブは、GISを通じて効果的に結びつけられる
  • 視覚資料のジオコーディングとマッピングは、都市の変化と文化遺産の時空間的なパターンを明らかにする
  • バーチャル京都は、都市の文化遺産の研究・保存・発信の基盤として機能する

あわせて矢野氏は、日本の学界でデジタル・ヒューマニティーズ研究を推進したいとし、アート・リサーチセンターとしてもこうした研究を進めていきたいと述べました。

講演情報

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この記事は、講演記録を基に生成AIを利用して作成したユースケース記事です。