Keynotes
English version abstracts are here.
September 10, 2018 (Monday) 13:00 - 16:15
基調講演は一般に公開します。英語講演(日本語同時通訳あり)です。参加するには、(1) 国際会議への登録(有料)、または (2) 基調講演への登録(無料) が必要です。当日会場で受付を行ってください。
※定員になり次第締め切ります。
The NIJL Database of Pre-modern Japanese Works
ロバート・キャンベル氏 (国文学研究資料館)
国文学研究資料館(NIJL)では、明治以前の前近代に作られた、日本の古典籍という比類なく豊かな遺産を対象に、デジタル化し、タグ付けし、それらを検索する新たな方法の開発に取り組んでいます。本日の講演では、現在進行中の上記プロジェクトを紹介するとともに、分野横断的なコラボレーションが文化的な理解や革新の深化につながりうる方向性を、いくつか提示してみたいと思います。
略歴:ハーヴァード大学にて博士号(Ph.D.)取得,東京大学名誉教授。現在、国文学研究資料館館長。
関連サイト:
https://www.nijl.ac.jp/
Amsterdam 4D: Navigating the History of Urban Creativity through Space and Time
Julia Noordegraaf (University of Amsterdam)
(Photo by Bob Bronshoff)
都市における文化産業は、都市の経済的な永続性と住民の幸福な生活に関わる主要な要素です。成功している都市的集積地域、例えばアムステルダムの特徴は、芸術家や、役者や、知識労働者が集まっていることであり、文化的な生産は都市の全体的な革新力や競争力にも寄与するものです。そこで人文学と社会学の研究者らはこの原動力について調査を開始しました。しかし、ミクロレヴェルの文化交流とマクロレヴェルの「創造的都市」の経済的・社会的成功との相関について、これまでのところ研究者はうまく説明できていません。それは空間と時間が織りなす都市の有り様には、多くの要因が複雑に関わっているからです。創造的な起業家はどこにいるのでしょうか?そして彼らはどのようにコミュニケーションし、相互作用を及ぼし、協業し、競争するのでしょうか?どのようにして彼らの商品は消費者への販路を見出すのでしょうか?そして、どのようにして都市は他の革新者を引き寄せる磁石となるのでしょうか?アムステルダム大学のCentre for Cultural Heritage and Identity(文化的遺産とアイデンティティのためのセンター)における「創造的なアムステルダム:デジタル・ヒューマニティーズの観点から(Creative Amsterdam: An E-Humanities Perspective; CREATE)」研究プロジェクトでは、人文学とコンピューターサイエンスの研究者が、アムステルダムの様々な文化セクターに関するデータを対象にデジタル的な方法を用いた共同研究を推進し、アムステルダムの文化産業が17世紀から現在に至るまでに、どのようにしてヨーロッパやグローバルな文脈におけるユニークなポジションを形作ったのかを調査しています。CREATEプログラムの主たる焦点は、アムステルダム・タイムマシーン(ATM)を構築することにあります。これはアムステルダムに関するリンクされた歴史データを探索するハブとなるものです。人・場所・関係性・出来事、そして事物に関する情報のウェブ(蜘蛛の巣状の情報構造)は、地理的表現や3D表現を通して時間方向や空間方法に展開することができます。この「過去版グーグル・アース」において、利用者は街全体から地域、道、家の間を行き来できるだけでなく、例えば商人や理事の家の壁を飾っていた絵画にもズームインできるようになります。異種の情報源に由来するデータセットを体系的にリンクすることで、文化的な出来事、日常の生活、社会的な関係、あるいはアムステルダムの公共的な空間の利用について、利用者は新たな研究の問いを投げかけることもできます。これは、顕微鏡と望遠鏡を一つにまとめたもののように機能し、研究者は特定の事物や人物、場所を、市全体におけるより広いレヴェルの社会プロセスに関連づけることが可能となります。このように、空間を視点として選んだ研究環境は、物理的・社会的な空間がこれまでどのように組織化され経験されてきたかに関する関係性を調べるためのまたとないチャンスを提供します。本日の講演では、アムステルダム・タイムマシーン(ATM)の設計とアーキテクチャを説明し、さらに創造的都市としてのアムステルダムの歴史に関する最近の研究プロジェクトの例を論じながら、今後の研究の可能性を示します。
略歴:アムステルダム大学メディア学学部教授兼同大学Centre for Cultural Heritage and Identity所長。Creative Amsterdam(CREATE)プロジェクトを率いる。視聴覚およびデジタル遺産の保存と再利用に関する研究を中心とする。
関連サイト:
http://www.uva.nl/profiel/n/o/j.j.noordegraaf/j.j.noordegraaf.html
https://twitter.com/jjnoordegraaf
http://achi.uva.nl/
http://www.create.humanities.uva.nl/
http://timemachineproject.eu/
Creating Collections of Social Relevance
Susan Schreibman (Maynooth University)
デジタル・ヒューマニティーズ(人文情報学)、そしてその研究分野を構成する人文情報学の研究者は、オープンアクセスの文化、学際的な共同研究、そしてメイカー精神を好む傾向があります。研究分野のこのような価値観のおかげで、人文情報学は、分野の垣根を越えて公共的な場にまでリーチし、高いインパクトを与えうる位置にいます。一般の人々と向き合う精神は、ウェブを基盤とする学問の自然な延長であると論じる人もいるかもしれません。しかし、単に資料をウェブ上に置いておくだけで、研究者がリーチしたいと思う人々を巻き込めるわけではありません。今でも人文情報学プロジェクトの多くは、小さなチームが情報資源を設計・構築し、その作業が「完了した」とき(もしくは、少なくとも他の人々が閲覧する準備ができたとき)に公表するというモデルを使っています。
本日の講演は、これとは異なるモデルである、参加型デザインのモデルに焦点を合わせます。そこでは人々、すなわち、我々の学問から恩恵を受ける可能性のある誰もが研究のプロセスに関わります。参加型関与プロジェクトは、我々の研究者・教育者としての役割、社会において研究者と同等の機会を持たない人々に対する我々の責務、そして我々自身と未来の世代のために意義深く社会的に重要性が高いデジタルコレクションをどのように構築するかについて、我々が再考するよいチャンスとなります。本日の講演は、参加型モデルの中でデジタル研究を設計するための哲学、仕組み、価値を探求したいと思います。
略歴:メイヌース大学教授兼同大学人文情報学センター所長。人文情報学の決定版入門書を執筆。アイルランド語詩の近代語法に関するものも含め講演及び著作多数。主要な近著として、A New Companion to Digital Humanities (2015), Thomas MacGreevy: A Critical Reappraisal (2013)など。
注意:国際会議への登録は、基調講演への登録を含みますが、英語から日本語への同時通訳は含みません。同時通訳が必要な方は、基調講演にも新たに登録してください。